時空を駆けたあの戦いから数年が経った。
崩壊したトーティスの再建は紆余曲折ありながらも進行し、去年には街と呼ばれるまでの発展を遂げた。
トーティスはもはや村の再建作業を最初に始めた三人だけではない、数え切れない人々の街となったのだ。
皺が深く残るシーツを掛けられたベッドが軋む。朝日が窓から差し込む寝室に、今朝初めての音が生まれ響いた。
控えめに体を伸ばして起き上がったのは、金色の長い髪をさらりと後ろに流す女性。毛布で胸元を押えているが、
白い肩は外気にさらされていた。
眠気を引きずりつつ、壁に掛けてある時計に視線を向ける。休日だからと油断していたせいで、今朝は少し
寝坊をしてしまったようだ。
時刻を確認してから視線を自分の隣、まだ心地よさそうな顔で眠っている男性に移した。
自然と笑みが零れる。いつもなら彼だってこの時間はとっくに起きている筈なのに、今朝はいまだ起きる気配を
見せず安眠している。昨夜頑張り過ぎたのはお互い様という事だ。
(でも、もう起こさなくちゃ)
休日とは言え、生活の基本リズムを崩すのは体調不良の元である。放っておいたら昼頃まで眠っていそうな恋人の肩を
そっと揺すった。
「クレスさん、クレスさん」
彼女と同じく肩を剥き出しにしたままのクレスが、ぼんやりと瞼を上げる。眠たそうに何度か目を瞬いてから、
自分を起こしてくれた人の顔を確認すると、頬を緩ませた。
「……おはよ、ミント」
クレスの指がミントの髪を撫で、肩へ、腕へと降りていく。その間もずっと表情を緩ませていたのは、
眠気のせいだけではないだろう。
「おはようございます、クレスさん」
指が腰に来た辺りでクレスの手をやんわりと掴むミント。変な意味は無いだろうが、用心に越した事は無い。
制止されながらも楽しそうに笑ったクレスがのそりと体を起こし、手を離した。壁掛けの時計が示す時刻を見ると、
それすらもおかしそうに笑った。
「わ、寝坊しちゃったなぁ。今日が休みでよかったよ」
「そもそもお寝坊した原因は今日がお休みだから、でしょう?」
呆れたようにミントが言った。本当に呆れているわけではないから、クレスと同じように笑いながらであったが。もちろん
クレスもそれは判っているらしく気にしたようではなかった。
「さて、と。それでは朝ご飯を作ってきますから、それまで待っていて下さいね」
「うん」
いそいそと床に足を下したミントが、昨夜脱いだ、もとい脱がされた衣類を拾って手早くそれらを身につけ始めた。
後からすぐに別の服に着替えるつもりだが、廊下を全裸で歩き回るのは抵抗がある。
クレスは、何となく残る倦怠感を一掃するように欠伸をしつつ、そんな彼女の後姿を見つめていた。視線に気付いたミントが、
シャツを着た所で振り返る。
判り易く疑問符を表情に浮かべたミントであったが、クレスに笑顔のまま無言で軽く首を振られ、特に追及はしない事にした。
……To be continued
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